嘱託を使う時の留意点

 企業が嘱託を活用する場合、大きく分けて2つのケースがある。1つは、社員寮の管理人や医師、弁護士等の専門家に委任することが望ましい業務に従事させるといった場合で、このような職務の場合は、職務として独立性が強く、職務の執行について会社から指揮・命令を受けることは少なく、独自の判断の下で業務を遂行することができる。
 したがって、こうした嘱託の場合は、法的には委任契約ということになるので、どのような内容の業務を委任するかを委任契約書に明記して締結することになる。これに対して、長年勤務した会社を退職したしたのち、従来の賃金体系とは別に雇用契約を締結するが、従来慣れ親しんだ仕事、あるいはこれに関連する業務を担当するといった場合もある。この場合は、会社としても安心であるばかりではなく、本人にとっても抵抗が少ない。
 定年退職後の嘱託の場合も、臨時雇いの場合と同様に更新を繰り返したのちに、更新を拒絶できるかどうかが問題となる。65歳までの継続雇用(定年延長、勤務延長、再雇用)の形態によっても異なるが、再雇用制度によって雇用延長されている場合は、65歳に達する以前に雇用を打ち切る場合には、あまり簡単に考えるとトラブルになる危険性もある。
 判例では、一般の臨時雇用の場合と同様に考えるのは適当ではないという判断を示している。その理由として、「定年退職後の雇用であること、会社には64歳を超える臨時雇いもすでにいないこと、本人の作業能率の低下、危険の増大が認められること、6ヵ月以上前から更新拒絶を予告していたこと」などの点を上げて更新拒絶を認めている。
 このように定年後の嘱託については、更新を繰り返した場合であっても、理由が会社側の一方的で恣意的なものではなく、合理的な理由があれば更新を拒絶できるとしている。事実、会社の再雇用規程では、業務に耐えられる身体的・精神的な能力を測定し、1年ごとに更新し、最終的には65歳まで再雇用するといった内容が記載されていることが多い。
 しかし、実際には、65歳を過ぎても会社にとって有用な人材と判断される人もある等、再雇用については、客観的に公平の処遇であるかどうかの判断は極めて難しく、必ずしも規定だけで判断することが出来かねるということもある。そうした場合に備えて、本人の働く意欲に応じて、多様なメニューを用意しておくことが安全弁となる。