労働契約の内容

 使用者が労働基準法の定めに基づいて、労働基準監督署長に対して行う届け出や許可または認定の申請以外、労働契約の当事者である個々の労働者との間で取り交わす書類の書式については、特別の定めはなされていない。そればかりか、労働契約の書面化自体義務づけられていないが、労使のトラブルを未然に防止するために文書化することが通例である。
 書式を作る場合に注意すべき点は、当然のことながら、その内容が法律およびその施行規則に違反してはならないことである。特に労働基準法に定められている条件は最低の基準であるから、これを下回ることは労働者の不利になるため、例え当事者間で合意して書面に明記したとしても、無効となることが労働基準法によって規制されている。
 次に、使用者が就業規則で定めている基準よりも労働者に不利益となるような条件を契約することも許されない。もしそうした契約内容になっていた場合は当然無効となり、就業規則に定めた基準が適用される。したがって、就業規則の条項に抵触するような内容は避けなければならない。つまり、労働基準法および就業規則に反する契約は無効となる。
 第三には、労働組合との間において、労働協約が締結されている場合には、その協定に定める基準に違反することも避けなければならない。第四に、憲法に定められている国民の基本的人権を侵害するような内容の労働契約は、例え特定の労働者と使用者の間で合意があったとしても、公序良俗に反するものとして当然無効とされる。
 第五に、身元保証契約については、特別法である「身元保証に関する法律」の規制を受けることになるので、同法に違反しないようにしなければならない。また、労働条件通知書を作成するときは、契約期間、就業場所、始業・終業時刻、変形労働時間やフレックスタイム制、休日・休暇、賃金、労働時間、退職などを明示しなければならない。
 最も、これら労働契約書や労働条件通知書は、就業規則の内容と重複するところが多いので、その場合は就業規則を明示すれば足りることになる。いずれにしても、労働契約といえども「契約」である以上、書面を作成することを義務づけているわけではないが、労使間紛争の火種をできるだけ少なくする意味において、必須と考えるべきである。