労働契約とは、使用者の指揮命令の下で包括的に労務を提供し、その対価として使用者が賃金を支払う関係を基礎とする契約であり、労働基準法が適用される労務提供契約であるから、民法上の雇用とは必ずしも一致しない。労働契約を締結するに際し、労働基準法第15条1項では、賃金、労働時間等の労働条件を明示しなければならないとしている。
しかし、中小企業などでは、労働条件の明示が不十分なことから、労働契約を締結する際には、就業場所および従事する業務、就業および就業の時間、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに終業時転換に関する事項、退職に関する事項、労働契約の期間に関する事項を書面で明示することとした(平成10年労働基準法改正)。
また、この規定は、パートタイム労働者にも適用されるとともに、雇入通知書には、昇給、諸手当、所定労働時間、安全衛生、教育訓練、休暇に関する事項についても明示するよう求めているが、その様式は統一されたものとして指定はされていない。もっとも、これらの事項が就業規則に定められている場合には、締結の際これを提示すれば足りる。
労働条件の明示に関しては、職業安定法で募集時にも明示することが義務づけられているが、賃金については、募集時点での現行賃金の記載で足りることとされているので、多くの場合、現行の賃金・賞与、初任給の見込み額などを明示することで済ませ、入社時に労働基準法15条に基づいて確定したものを明示しているのが現状である。
募集広告の内容はあくまでも見込み額であるから、採用時と異なるのは義務違反ではないが、場合によっては、雇用契約締結に至る過程で、信義誠実の原則に反するとして不法行為として提訴されることもあるので注意を要する。要は、「看板に偽りあり」と判断されるような目に余った落差(募集広告と雇用契約時の差異)は避けるべきである。
こうした問題を起こさないためには、採用者側としては誠実に対応することはもちろんであるが、募集や内定の段階で、「入社時の条件については変更があり得る」という但し書きを付けておくことが肝要であるが、このことが、応募者から敬遠され内定を取り消されるという事態を招くことにもなり兼ねないので、その点に対する注意も必要となる。
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