ファシリテーターに求められる基本スキル

 会議を円滑に進めるためのファシリテーションには、幾つかの基本的なスキルがあるが、まず、何を目的にして、どのようなメンバーを対象にして、どのようなプロセスで議論を進めていくのかを念頭に、会議をセットすることに始まる。こうした最初のシチュエーションを間違えると、問題解決のための活動プロセスがメンバーに伝わらない。
 こうした段取りにより会議が始まったとしても、お互いに自由に意見を述べ合うことになるので、場合によっては意図せざる方向に話が傾斜してくることもあるため、こまめに軌道修正をしながら、チームの意識と相互理解を深めていくように運営していく。そのためには、傾聴、復唱、質問、主張、解読などのコミュニケーション能力が求められる。
 対人関係を良好にするスキルは重要であるとはいっても、単にメンバーの思いをそのまま受け止めるだけで、議論がかみ合わなければただの茶飲み話と何ら変わりない。発散させることで話を展開させたのち、今度は議論の全体像を整理して論点を絞り込まなければならないから、ロジカルシンキング手法などを自在に駆使する能力が必要である。
 議論がある程度煮詰まってきたならば、目標水準を意識しながら創造的なコンセンサスづくりに向けて、意見調整を図る段階を迎えるが、会議はここで大きな山場を迎えるのが普通である。例えば、この段階になると、お互いの利害の対立構図が明らかになってきて、総論賛成、各論反対という状況に陥ってしまい、本来の目的さえ無視されかねない。
 すべての会議において、最終的な合意形成は困難であることは多いものだが、そうした状況が予想されるからこそ、ファシリテーションが必要であるとも言えるわけで、足して2で割るような結末しかないのであれば、ファシリテーターの存在も必要ないことになる。そうした意味では、ファシリテーターは単なる議長や行司役とは異なった存在である。
 このように、ファシリテーターに求められる基本機能は、場づくり、コミュニケーション能力、調整力、合意形成力など多岐にわたるが、どれが一つ欠けていても、あるいはどれだけが一つ優れていても、その役割を果たすことはできない。しかし、全ての機能が一気に身に着くものでもないので、体験や学習を通して能力を磨きあげていくしかない。