人と人との相互作用の促進

 ファシリテーターに求められる技量は、つまるところ人と人との相互作用を促進して、「関係の質」「思考の質」「行動の質」「結果の質」を高める成功の循環を作ることにある。問題解決や合意形成の舵取りのプロセスには、場の設定をする外面的プロセスとメンバー一人ひとりの考え方や筋道などの思考的プロセスである内面的プロセスの2つがある。
 会議を円滑に進めるためには、外的プロセスが必要であるが、成果や満足感を高めるためには、内面的プロセスが重要である。会議では、メンバーそれぞれの考え方や思いがぶつかり合って、感情も関係性も常に変化していく。そうした切磋琢磨の中で新しい考え方や合意形成ができあがっていく。正にこれがチームのダイナミズムである。
 ファシリテーターは、両方のプロセスにかかわることで、人と人の相互作用を促進していきながら成果の質量を高めていくのが役割であるが、行動を伴わない精神論だけでは成果は期待できない。とはいっても、実際に行動を変えるのは至難な業であり、特に固定化された枠組みができあがっている年配者を行動に駆り立てるのは難しい。
 固定化された思考を打ち破るには、自分自身の心を省みる内省である。これは決して簡単なことではなく、自分で壁を破るのは難しく、コーチやカウンセラーなど第三者の手助けが必要で、これがいわゆるコーチングと呼ばれるものであるが、もう一つは、相互作用を使って自分で壁を破るのがファシリテーションであると考えられる。
 他者とぶつかり合い、お互いの違いを知ることで自分の壁に気づき、新しい自分を発見して行く。もちろん、どちらが優れているという問題ではなく、その時と場合によって威力の度合いも異なる。いずれにしても、目指すところは人と組織の活性化であり、課題や状況に応じて組み合わせて使えば効果も高まることになるはずである。
 ファシリテーターに求められるスキルは広範囲におよび、実に活用分野が広い。コンテンツの最終責任はリーダーにあるわけだが、ファシリテーターは、プロセスの責任をもたなければならない。会議を円滑に進め望ましい成果に結びつくようにするためには、メンバーの参加度とプロセスの共有度の不足が起らないように注意しなければならない。