コンテクストの違い

 コンテクストとコンテンツは、お互いの意味を深く理解する上で重要な意味をもっている。情報の発信者が送るコンテンツの価値を受手が評価する場合、何について、どんな立場からコンテンツを組み立てているのかを理解しなければ、正確には伝わらないはずである。端的にいえば、コンテクストの違いがコンフリクトを生じさせる背後にある。
 コンテクストとは、文脈であると一言で説明してしまうと、味も素っ気もないが、文章で言うと行間を読むことであったり、文化的なコンテクストで言えば、言語、文化、風俗、習慣、宗教、行動規範、常識、価値観その他も当然含まれる。つまり、コンテクストの違いを解消しないまま、強引に議論を進めても円満な結論に辿りつくことはできない。
 しかし、コンテクストの相違は、どのような括りで捉えればよいのかというと、これもまた気の遠くなるような問題を孕んでいるわけで、コンテクストを共有する状況をつくることは困難であるが、さりとて、実際に生じているコンフリクトをそのまま放置するわけにもいかないとすれば、どのような点に着眼して調整を図ればよいのであろうか。
 抜本的な解決策とは言えないかもしれないが、直接コンフリクトを解消するための調整を行うのではなく、もっと高い次元にある共通の目的にひとまず遡り、コンフリクトは目的を達成するための手段の相違にあることを確かめることが先決である。つまり、言葉でいえば、同時通訳が可能な状態にすることで、コンテクストの違いを調整するわけである。
 目的に遡ってみると、今度はどのような視座から物事を見ているか、そしてどんな視点で物事を見ているかを確かめるべきである。ここでは主に時間や空間、システムなどの違いに着目してコンテクストの違いが生じている原因を確かめる。当然これだけでは不十分であるから、どのような立場からのメッセージなのかもしっかり受け止める。
 情報発信者の立場を理解することで、コンテンツがかなり理解できるようになるという経験は、誰にでも心当たりがあるはずであり、ここはコンフリクトの解消には重要なポイントであることには異論がないであろう。こうしたポイントを押さえて、コンテクストの違いを緩和することができれば、より望ましい結論に近づける議論に戻ることができる。