対立の原因を明らかにする

 水と油のように対立していた二人の意見をよく解きほぐしてみると、あまり変らなかったということもある。民主主義の最大のメリットでもあり、最大の欠点でもある多数決で物事を決めようとすると、賛成と反対で両者の主張は2つに分断されてしまう。十分に議論を重ねた上であればそれもやむを得ないが、コンフリクトを解消したことにはならない。
 賛成にも反対にもそれなりの理由があるはずで、その理由を明らかにすることができればコンフリクトの解消に役立つことは明らかである。対立の根源を探るには、ロジック・ツリー型のチャートで整理してみるのが一番わかりやすい。つまり、一致している点を起点にして、どのレベルで対立が生じているかを見つけ出すことができるからである。
 例えば、会社の帰りに一杯飲みに行くという点では合意しているが、店をどこにするかで意見が一致しないのか、それとも、いつもの店というところまでは一致しているが、誰を誘うかで意見が合わないのかなどが明らかになれば、対立点を解消する妥協点は容易に見つかる。現実には、こうしたコンフリクトはあまり起こり得ないのはなぜなのか。
 それは、「一杯飲みに行こう」と誘うだけで、言外にかなりの条件がセットされていることをお互いによく知りつくしているからにほかならない。こうした場合、過去に生じたコンフリクトの学習効果が事前に働いているからで、いわゆるコンフリクトの背景にあるコンテクストを共有しているため、相互理解が深められているからである。
 論理的には筋が通っているようでも、これを受け取る人によって理解のしかたはかなり異なるものである。特に両者が属するそれぞれの準拠集団によっては、文化の違いを超えた独特の雰囲気があり、同じ言葉でも解釈の違いにより、本筋がゆがめられて伝わってしまう。こうした状況を緩和するためにはコミュニケーションを円滑にするしかない。
 相手に伝える情報の本体や中核的内容はコンテンツと呼ばれ、本来はこのコンテンツが論理的かどうかによって、議論の価値判断をするわけであるが、他人が発する情報の中身(コンテンツ)を正確に理解するには、前述のように他の情報をどれだけ共有できているかにかかっている。この関連性こそがコンテクスト(文脈)なのである。