取引先の協力がない場合

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 取引先の協力がない場合は、法的手段により強制的に回収手続きを取らざるを得ないが、最初から訴訟を起こすのでは、時間的制約や費用の面でリスクが大きい。そこで、通常取られるのが仮差押や仮処分である。これらの申し立ては、訴訟に移行することは十分考えられるが、取りあえず資産を現状のままで保全するためには有効である。
 訴訟を起こして判決により強制執行をしようとすると、かなりの時間がかかるうえ、その間、他の債権者に執行すべき財産が先取りされてしまうこともある。そこで、将来の強制執行に備え、債務者の財産を目減りさせないように、予め債務者の財産や現状を凍結して保全しておく法的手続きが、仮差押や仮処分などの保全処分なのである。
 保全処分のうち、仮差し押さえは金銭債権の保全で、仮処分はそれ以外の権利を保全するものである。これらの処分は、本来の回収手続きではなく、あくまでも保全の方法であるが、債務者にとってはかなりの圧力となるため、弁済の可能性を高める効果があるが、取引先が破産や会社更生法、民事再生法の手続きに入ると仮差押は失効してしまう。
 仮処分も被保全債権が所有権や引渡請求権の場合を除き失効してしまうので、こうした場合は、会社ではなく個人に対する保証履行請求権や損害賠償請求、担保物件保全のために利用する仮処分等に制限されることになる。ただし、商品などの動産売買の先取特権は中止命令が出されない限り、法定担保権として行使できる。
 したがって、これに基づいて動産競売の申し立てや物上代位による債権差押の申し立てをすべきである。なお、仮差押、仮処分などの保全処分の申し立てができる要件は、被保全権利が存在していること、今仮差押をしておかなければならない保全の必要性があることである。この2点を主張して疎明することが保全命令の不可欠な要件である。
 こうした要件が求められるのは、債権者の一方的な申し立てにより、債務者の意見を聞かずに裁判所が判断するという背景によるものである。そのため、保全申請をするためには、一定の保証金を用意する必要がある。一般的には、保全対象物の評価額の2ないし3割あるいは、請求債権額の2ないし3割が目安と考えておくべきである。