取引先の協力がある場合

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

 取引先が倒産もしくはこれに近い状態に陥った時、債権回収がうまくいくかどうかは、取引先の協力度合いによって大きく異なる。こうした状況下にあっては、もともと取引先の返済財源は限られているわけであるから、得意先が協力的である場合は、そうでない場合に比べ、交渉の進め方や担保の存在など全ての点において有利になる。
 一般的に取られる債権回収の方法としては、抵当権の設定、債権譲渡、保証、納入商品の引き上げなどが主なものであるが、返済財源が乏しい場合は、選択できる手法も限られているし、他の債権者の動向も気になるので、できるだけスピーディにことを進めなければならないという状況の中では、取引先の協力がなければ有効な手を打つことができない。
 特に、納入商品の引き上げに関しては、優先特権があるとはいうものの、第三者に売り渡したという形になっていれば、その売掛債権の譲渡を受けるか差し押さえ(仮差し押さえ)をしなければならないが、現実にはそれさえも難しいかも知れない。こうした時によく話題になるのが取り込み詐欺ではないかという問題である。
 いずれにせよ、法的手続きによらざるを得ない場合は、裁判費用や弁護士費用が発生するので、費用と効果を比較しながら回収の可能性を見極めなければならない。また、取引先の協力が得られたとしても、他の債権者か詐害行為として回収行為の取り消しを求められる場合や法的整理に入った場合は、否認権を行使されることもある。
 しかし、そうしたことを考慮して躊躇している間に、他の債権者が強硬な手段を講じてくる可能性は十分あるので、取りあえず囲うべきものは素早く確保するという姿勢で臨まなければ、債権を回収することは難しい。ましてや、取引先の経営者が夜逃げをしていないといった場合は、無法地帯と化してしまうので、強奪とみなされることもあり得る。
 取引先の信用不安に関する情報が単なる噂だけであったり、多少はそうした兆候があったとしても、一旦取り付け騒ぎに火がつくと、情報の信憑性を確認する暇もなくなり、あっという間に債権者が駆け付けるので、ますますその動きを加速させてしまう。こうなってしまうことを避けて、法的整理を選択する企業が多くなってきている。