弁護士を起用する時の留意点

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 債権回収に関連するトラブルが発生すると、最終的には法廷に持ち込まざるを得ない案件も多いものと思われる。そうした場合は、弁護士を起用することになるが、債権額の確定や取引先の担保余力などを把握しないまま、弁護士に依頼しても満足のいく解決には到達できないので、まずは状況を正確に把握しておくことが基本である。
 中小企業の経営者の中には、弁護士に依頼すれば債権が回収できるものと勘違いしている人も未だに見かける。どんなに有能な弁護士でも、取引先に全く資産がなければ回収できるはずがないのに、弁護士に依頼することで債権回収の手続きが完了したかのように安心しきってしまい、必要不可欠な情報収集さえも怠ってしまう場合もある。
 債権債務を巡る争いは実に多様であるが、債務名義を獲得することで完了するのではなく、実際に債権をどれだけ回収できるかが問題なのだが、裁判に持ち込み取引先の支払い義務を認めさせることに勢力を注ぎ過ぎ、肝心の支払い能力を確認する作業がおろそかになってしまっては、高い費用を負担して弁護士を起用した意味がない。
 債権回収は時間との戦いであるから、債権の確定ばかりではなく、取引先の売掛金や担保余力の状況などをできるだけ短期間に把握しなければ、他の債権者に遅れをとることになるというサバイバル競争である。法律の専門家といっても、企業経営を巡る知識や商取引に精通していなければ、同業の債権者の動きが読めないこともある。
 特に倒産や会社整理に関する案件を数多く経験している弁護士でなければ、債権回収を有利に進めることはできないので、得意分野を確かめた上でなければ依頼すべきではないが、現実には一旦起用した弁護士を解任することは中々難しい。弁護士費用の安さに惚れて依頼してしまったケースには、こうしたミスマッチが発生する可能性が高い。
 このように、どの弁護士に依頼するかは大問題であるが、一方で、経営者の意思を正確に伝える努力はそれ以上に大事である。例えば、自社にとって都合の悪いことや書類の不備などを正確に伝えず、ただ丸投げの形で依頼してしまったような場合は、弁護士の力量を発揮することができなくなるといったことも大いに起こり得ることである。