信用不安による出荷停止

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 手形ジャンプ要請に応ずるべきかどうかという問題と同じように、取引先の信用不安情報が舞い込んできた場合に悩むのが、出荷を停止すべきかどうかという問題である。すなわち、何らかの手を打つこともせず、出荷を継続し続ければ、既存の売掛金に加えて発生する債権が拡大してしまい、未回収の代金が増加することになる。
 しかし、単なる信用不安のうわさだけで出荷を停止してしまうと、契約違反による損害賠償請求を受ける羽目になってしまうことになり兼ねない。こうした局面に立たされた場合、まず、債務者の信用不安状態がどの程度のものなのかを客観的に把握することが必要である。例えば、手形不渡り、銀行取引停止処分、破産手続き開始などを確認する。
 上記のような現象は客観的に把握しやすいが、自主廃業、経営者の経営放棄(夜逃げなど)といった、事実上営業を停止している場合や債務者の資産が差し押さえされた場合などは、そう簡単には把握できない場合もあるので悩ましいところである。これらの信用不安情報を確実に入手するには、直接債務者に確かめる以外ないこともある。
 そうした意味においても、常日頃からの付き合いが重要である。貸借対照表や損益計算書、資金繰り表などの財務諸表を提示してもらい、経営状態が把握できるような関係にあれば、どのような協力ができるかの判断も比較的できやすい。要は、債務者の協力が不可欠ということになる分けであるが、現実にはかなり難しいものと思われる。
 通常の場合は、上記のような良好な関係が築かれていることは少ないと思われるので、その場合は、信用不安が単なる噂に過ぎないのかどうかを調査しなければならない。そのためには、債権債務の状況を把握できる帳簿閲覧や資金繰り表の確認を申し出ることが必要となるが、ここは避けられないので正面からお願いするしかない。
 債権者のこうした申し出を債務者が拒否することは十分に考えられるが、その場合は、決済条件の変更、担保差し入れ(増加)などを要求することになる。債権者は、債務者の経営状況を把握したうえで取引を決定するというのが原則である以上、情報の開示を拒否するということになれば、これらの措置は当然ということになるからである。