資産運用に関するリスクは実に様々で、安定した運用方法が確立されているわけではない。かつてのように、不動産は値下がりすることはないという神話が実しやかに囁かれていた時代は既に終焉し、回復の兆しが見え始めたとしても一過性の現象と捉えなければならず、不動産は最早投機の対象としては敬遠されるようになりつつある。
中小企業でも、表面的には財務内容が良好であり純資産倍率も高いが、その中身の殆どが土地であるため、本業の業績が少し悪化すると、たちまち資金繰りがタイトになるという構造になっている会社もある。タイミングを遅らせてしまうと、減損会計を実施しようにも資金が枯渇してしまってからでは、企業体質をスリムすることもできなくなる。
一般的には、ムーディー、スタンダード&プアー社のように、個々の債権から国債の格づけまで行っている権威ある評価に従うことが無難であるとされているが、経済情勢を見誤ると、大きな痛手を被ってしまう。現状分析はマクロ、ミクロの視点で行わなければならないが、実態経済の状況と株式市場では、かなり乖離していることもある。
バブルの時などはその典型であったが、一旦投資が回り出すと、いつかは景気に陰りが出るとは知りながら、取りあえず目の前の資産を買いあさるという現象がみられた。経済企画庁や日銀が発表する短観なども、経営者の実感とはかなり乖離している場合もあるなど、安全な資産運用の指針をどこに求めるかには苦慮させられる。
しかし、これらの判断の裏づけは本来他人に委ねるものではなく、自社の経営体質や同業他社の動向を踏まえた上で、自社独自の判断で決めるのが鉄則である。いずれにしても、経済がグローバル化している現在、リスクを分散させて管理することが不可欠な現状にあることから、極大化を目指すのではなく、満足水準をどこに設定しておくかである。
ある中小企業では、徹底した合理化策を講じた結果、財務内容の改善が図られ、純資産倍率が格段に大きくなったが、土地などの不動産を購入したため資本の運用効率が低下した。これらの不動産を活用することで本業の拡大を目指したが、結局資本の付加原価を上回る収益に結びつくような事業活動ができず、一層窮地に追いやられる結果となった。
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