フェルミ推定の基本ステップ

 推定の方法を選択する前に確認しておく必要があるのは、何を推定するのかという対象を明確に定義しておくことである。「日本には自動車が何台あるか」という問題を解こうとする場合、車とはどのレベルのものを指しているのかを定義しておかなければ、基本の算定式が作れないばかりか、全体の構造を適正に分解することもできない。
 つまり、車とは、エンジンで自走する車に限定するのか、自転車やリヤカーまでも含めて考えるのかによって、保有率や保有層、保有場所なども全体に含めて考える必要が出てくるので、求める基本式も複雑なものになる。そこで、まず推定する対象をどのレベルに限定するのかを定義し、アプローチの方法を確立しておかなければならない。
 この前提条件が確認されると、次のステップとして基本式を階層化して分解する行程に入る。ここでは基本式の大元となる総人口や世帯数、所有率などを年代別や男女別などの階層に分解して、それぞれの階層の特性に応じた式を作りだす。すなわち、因数分解的にいうと、大括弧の中を更に小さい因数に分解してみるイメージである。
 比較的簡単な推定問題であれば、総人口×保有率というような基本式に平均の保有率を推定することで足りることもあるだろうが、このやり方だと、平均の推定方法が、山カンに近いので、推定の精度はかなりアバウトなものになる可能性が高い。そこで、この保有率の中身をある程度階層化して分解することにするというひと手間をかけるわけである。
 このステップにおける作業の中身は、ある特徴のある母集団に細分化して、その集団を総数に見立てて推定をすることである。集団を限定することでより正確な情報が得られやすいことに着目できるというメリットを生かし、そこで計算された小計を全体の基本式に代入していくことで推定の精度を高めていくというやり方である。
 そして得られた計算結果が推定値ということになる分けであるが、これが妥当なアプローチであったかどうかを検証してみる必要がある。何故ならば、そこにはモレやダブリがあることがしばしば生じるので、推定の結果に自己満足するだけでは心持てない。前提条件や基本方程式の設定の仕方、階層化による分類についても検証してみる必要がある。