マクロとミクロ

 フェルミ推定では、推定することによって導き出そうとする解を「ストック問題」として捉えた方がよいのか、それとも「フロー問題」として捉えるべきかをまず検討をつける。次に、「マクロ的視点」から迫った方がよいのか、「ミクロ的視点」から手掛かりを掴むのがベターかを頭の中でイメージしながら短時間でシミュレーションしてみる。
 この4つの組み合わせは、言わば推定をする時に自分にとって推定しやすいモデルを作る段取りをしていることである。もっと噛み砕いて言うならば、自分の得意とする情報収集方法や既存情報の把握度合いなどによっても、選択すべきモデルは異なるので、大分類の仕方にも違いが出るのは当然のことであるから、固定的に考える必要はない。
 ただ実際に取り組んでみると、アプローチの仕方が適切でないと、実態と大きくかけ離れた結果が導き出されてしまうことはよく経験する。推定とはそんなものだと割り切るのも一つの考え方ではあるが、どのプロセスで大きく踏み外したのかを検証してみると、そこには大きな落とし穴があったことに気づかされるはずである。
 その時に気づくのが、途中の計算プロセスよりも、アプローチの設定とモデル化に問題があったことである。つまり、推定すべき問題をどのように定義するかを間違えてしまったのでは、推定の精度が落ちるのは論外としても、「ストック」「フロー」と「マクロ」「ミクロ」の組み合わせが不適切な場合は、その後の計算が正しかったとしても精度は落ちる。
 例えば、ある家電製品がどれくらい売れているかという問題をミクロ推定で迫れば、家電量販店1店当たりの売上高を推定して、これを積み上げて全体の売上高を推定するというアプローチをした場合、各店舗の売上高に差があればあるほど、最終的な集計値の信頼度は下がることになるが、「ストック」と「マクロ」で迫ればより実態に近づける。
 しかし、そうはいっても、推定したい対象によってはストレートにこうした組み合わせを選択したとしても、肝心のアプローチの手掛かりが見つからないか、時間的な制約から断念せざるを得ないこともあるので一概には言えないが、少なくともセオリーとして確立しておけば、TPOに応じてアプローチの方法も速やかに選択できる。