ストックとフロー

 ものごとを解決しようと考える時、人はどのようなプロセスを辿って核心に迫っていくのだろうか。自分にその解決策の糸口を見つけられる心当たりがあるときは、当然その糸口から入り徐々にその問題を解決するための手段を見つけ出せるが、全く見当もつかないという場合には誰かに相談するのが一番だと考える人もいるに違いない。
 フェルミ推定で主に扱っているのは、「どれくらい存在するのか」「どれくらい売れているのか」という問いかけに対してどういう取組姿勢で臨むのかをテーマにしている。もちろん、推定するといことは、論理的な思考で推理するということであるから、「どのように取り組んだらいいのか」とか「どちらの方法を選んだらいいのか」なども含まれる。
 例えば「死亡推定時間」とか「推定年齢」なども推定問題である。前者の問題と後者の問題は一見全く違ったもののようにも思えるので、当然解決に至るアプローチの方法も異なると考えてしまうが、仮説を立てて検証しながら進めるという基本スタイルは同じであり、問題を因数分解により、掛け算と足し算に展開できれば四則演算で対応できる。
 ストックはある時点における存在量と捉え、フローは一定期間の変化と定義すれば、どのような問題にも応用できる。すなわち、「ストック」と[フロー]という分け方も一種の因数分解であると考えれば、それぞれに場合分けをすることで、推定方法を選びやすくするためのものであると捉えることもできるのではないかという仮説から生まれた。
 この分け方は、前述の「どれくらい存在するのか」「どれくらい売れているのか」という問いかけの解を求める場合には特に威力を発揮することで知られている。具体的問題としては、日本中に自動車がどれくらいあるかというような問題や年間どれくらい自動車が売れているという問題がそれであり、問題によって推定方法が見つけ出しやすい。
 推定方法とは手掛かりであるから、一気に問題を解決できる方法を見つけ出すということではなく、どういう人が自動車を所有しているか、どれくらいの所得があるかといった、推定の基礎となる既定事実をまず手に入れる。こうした手掛かりの連鎖によって次第に問題解決の核心に迫っていくことが推定するという意味なのである。