マネジメントコンピテンシー

 マネジメントをカテゴリーごとに整理する際、共通のコンピテンシーと専門コンピテンシーの他に、マネジメントコンピテンシーを挙げる場合もある。それは当然専門コンピテンシー中に分類すべきであるという考え方と矛盾するものではなく、リーダーシップを発揮することが期待されるマネジメント層のコンピテンシーを特化して取上げたに過ぎない。
 そうした議論はともかく、コンピテンシーが発揮能力であると定義している以上、社員が保有している能力をいかんなく発揮するためには、多かれ少なかれリーダーのコンピテンシーの影響を受けることは間違いない。つまり、社員をやる気にさせるリーダーになるためには、マネジメントコンピテンシーが必要であることを強調しているわけである。
 中小企業の場合は特に、専門コンピテンシーを発揮し業績を向上させた功績により、管理職に抜擢されたというケースが多いため、管理者としてのコンピテンシーに欠けているといった場合が結構多いようである。管理者研修では、そうした点の是正を求めることを主眼としたものが多いところを見ると、あながち的外れではないのかもしれない。
 つい先日も、ある企業でマネジメントの人材育成術についてコメントを求められた。曰く、「先代の社長は人を褒めるということを全くしない。これでは社員の士気は上がるはずがないのに、当人は業績を挙げるためにはこの方法しかないと信じ込んでいる。」というのである。この社長は営業畑一本やりで出世してきた人物である。
 確かに人を育てるためには、叱咤激励だけではなく、場合によっては褒めることも必要であるが、この社長の場合はマネジメントコンピテンシーばかりか、専門コンピテンシーも備わっているとは評しがたいので論外であるとしても、部下のモチベンションを高めるためには何が必要かと自問自答する姿勢は崩すべきではない。
 上司と部下の関係は複雑であり、コンピテンシーだけで論ずべきことではないかもしれないが、原則として部下は上司を選ぶことができない以上、高業績達成に向かって行動するように動機づけることは最低限必要である。これがマネジメントコンピテンシーであるとすれば、むしろ、上司固有のコンピテンシーであると見るべきなのかもしれない。