共通のコンピテンシー

 コンピテンシー辞書の基本構成は、専門のコンピテンシー、共通のコンピテンシー、固有のコンピテンシーであると述べたが、そのカテゴリーのなかの共通のコンピテンシーとは、社員全員が高めなければならないコンピテンシーで、接客態度とか電話応対といった会社の理念と直結するものがこれに当たる(コアコンピテンシー)。
 このコアコンピテンシーの候補となり得るものは、人格に関する分野と行動科学分野に関するものという2つのカテゴリーに分けられる。前者は、自己の成熟度を評価する項目で、各人の行動の基礎となる性質のものである。これに対して後者は、実際の行動を評価する項目で、行動に駆り立てる原動力となる性質のものである。
 自己の成熟度を評価する項目の候補としては、自己認識(感情理解)、自己統制(冷静さ、誠実さ、几帳面、慎重さ、思いやり、規律性など)、自己革新(ストレス耐性)、達成意欲(徹底究明)、自己評(自己理解)、礼儀作法(ビジネスマナー)など、一般的に人物を評価する時にチェックされる項目が評価候補としてあげられる。
 一方、発揮行動を評価する項目としては、モチベンション(行動志向、自立志向、挑戦意欲)、環境変化に対する柔軟な対応力、信頼性、協調性、革新性、自己啓発、チャレンジ指向、時宜を得た判断力、反対意見に対する対処力などである。しかし、これらの要素がどのように関連し合い、発揮行動として結集されるかを直接説明するものではない。
 これらは、一般に感情コンピテンシーと呼ばれるもので、個人的コクピテンシーと社会的コンピテンシーに分けられるが、両者ともに専門コンピテンシーのコアを形成しているコンピテンシーであるため、感情コンピテンシーの自己啓発や自己統制、モチベンションのコンピテンシーレベルの向上が、社会的コンピテンシーに繋がるという関係にある。
 個人的コンピテンシーが未成熟であると、自分と違った考えに耳を傾けるというような行動が取れず、自分と違うものは「悪」であると決めつけ、相手を威嚇したり、権力によって強制的に服従させるといった独善的な行動に走る。このような人物は我々の身辺にも結構存在しているが、社会性に欠けているため組織的な行動が取れない。