コンピテンシー・マネジメントの体系(その2)

 コンピテンシー・マネジメントを導入する最終目的は、経営戦略をいかにして確実に実施し、成果をもたらすかにある。そのためにはまず、戦略目標を設定し、これを受けて組織目標、部門目標を設定するという一連のプロセスを経た後、これを具体的に展開する業務目標へとブレークダウンされていくことになるわけである。
 業務目標は、個人の業務範囲と責任を明確にすることで、個人目標として設定される。ここからが実際のパフォーマンスの局面に入ることになるが、目標達成に向けての効果的な行動の促進が課題となるので、行動の観察と記録、コーチング、職務機会の提供など、コンピテンシーを研くためのマネジメントが展開される。
 更にここまでの行動に対する評価を踏まえ、業務目標達成に向けて修正あるいは改善が施されるという小さなPDCAサイクルを回すことになる。そして、期末には実績の評価が多面的に行われるとともに、目標と結果の差異の測定などを経て、人事制度へと適用され、給与・報酬、昇進・昇格などの処遇に反映されるというプロセスをたどる。
 一方、目標と成果の差異を把握・分析することで、個人のコンピテンシーと仕事で要求されるコンピテンシーを対比させて、更なるコンピテンシーの開発に取り組まなければならない。ここでは、高業績を上げているもの行動パターンを研究したり、それを踏まえて効果的な行動をモデルとして構築するためのシミュレーションが繰り返される。
 コンピテンシーを開発するということは、当然個人の資質を高めることも含まれるので、知識やスキルの習得などを内容とした教育・訓練体系も整備していく必要がある。ここで注意しなければならないことは、これまで行ってきた研修体系ではなく、仕事で要求されるコンピテンシーを身につけることを目指したものであるということである。
 このように、業務目標の達成を目指して繰り広げられる小さなPDCAサイクル、経営戦略を軸とした年度単位で回す大きなPDCAサイクルの整合性をチェックするのが全体の構図である。この一連のサイクルの中で、担当業務と個人のマッチングや担うべき役割の見直しなども含めて、個人のキャリア形成にも寄与することも念頭におくべきである。