コンピテンシー・マネジメントの体系(その1)

 コクピテンシーとは、ハーバード大学の心理学者であるマクレランド教授により、1970年から研究が始められたとされているもので、「ハイパフォーマー(高業績者)が高い成果を生み出すための特徴的な行動特性」のことである。ハイパフォマーの特性をベンチマーク(調査比較)して、採用や昇格、人材起用などに活用するのが基本である。
 成果に結びつく行動はなかなか特定できないが、コンピテンシーとは何かを定義しなければ、客観的に評価することはできない。特にコンピテンシーを人事制度に導入した場合、能力主義とどこが違うのかという素朴な疑問に答えられなければ、意味がないことになる。そのため「保有能力」と「発揮能力」という言葉で表現される所以でもある。
 つまり、コンピテンシーは、ある人がいわゆる優秀であるかどうかは関係なく、その能力が成果につながるように行動かされているかどうかに焦点が当てられている。別の言い方をすれば、成果を上げている人の行動特性はどのような能力によって支えられ、それらが有機的に結びつき実際の行動となって表れたのかということに着目している。
 それは、いうなれば、見える部分と見えない部分とからなり、前者は知識、技能、態度などからなり、後者はこれまでの体験や経験(学習)などにより、自己の中で体系化された自己概念といったものがこれに当たる。もちろん、これらの基礎となっている、興味・関心・好奇心・欲求そして、これらを育んだ環境などが影響している。
 コンピテンシーを分析するには、優秀な成績を上げている社員(例えば営業社員)は、どうして高業績を上げることができたのだろうかと考えてみる。そうすると、お客様から支持されているという当たり前のことに気がつくはずである。そうすると、次はどのような行動が支持を受けているのかに着目することになるであろう。
 このような視点で一人の具体的な行動に着目すると、仕事をするうえで何を考え、どのような点にポイントをおいて行動することが、高い成果を上げるために必要かが見えてくる。そして、こうした行動特性を分析して体系化したものが「コンピテンシー・ディクショナリー(辞書)」で、採用、配置、能力開発、後継者育成、給与・報酬などに応用される。