成果をもたらす能力の定義

 ビジネスばかりではなく、ものごとすべてについて言えることは、成果を出すためには行動が伴わなければならない。その行動とは、単なる「動き」ではなく、成果をもたらすために有効な行動ということであるから、この行動を支える知識やスキルが備わっていることが条件であるが、成果を支えているのはこれだけではなさそうだ。
 知識やスキルは、経験によって磨きあげられると考えられているが、同じ経験を積んでも成果に大きな差が出ることを考えると、知識やスキルを獲得するもとになるのは価値観や取り組み姿勢、知能指数などのような固有の基礎能力である。そして、価値観や姿勢を決めるのは性格や環境によって育まれる動機づけ要因(高い目標設定)である。
 能力の構造をこのように捉えると、能力=(基礎能力×知識やスキル獲得に対する動機づけ)と表現できる。一方、成果=能力×行動と表現するとすれば、行動の質量はやはり動機づけによって決まることになるが、それでは、能力と動機づけは別物かというと、現実には、能力のあるものが自分を自ら動機づけていることが多く見られる。
 すなわち、仕事に対する価値観や姿勢は基礎能力、知識、スキルの保有状況とも大いに相関関係があるようにも思われるが、それは多分勘違いなのであろう。つまり、能力のあり・なしとやる気のある・なしの組み合わせによって、成果の出かたに差がつくというのがどうやら一番ぴったりする説明ではないかと思われるのである。
 能力が高くかつやる気のあるものは、成果を出しやすいのは当然であるが、中には、能力は高いと思われるのが、やる気がないという社員もたまには見かける。こういう人は経営者や上司と価値観が共有できないか、あるいは処遇面や職場環境などが影響して、やる気を削がれているといった場合であるが、現実にはそれほど多くはない。
 そして、健闘している多くの社員は、それほど高くはないが、与えられた環境によく適合し、それなりの成果を上げている。その努力が上司から評価されることによって更に上を目指すという行動パターンが生まれる。この場合、価値観や意欲、基礎能力、これらによって支えられているとされる知識、スキルなどでは成果に結びつく行動は説明できない。