コンピテンシーとは、「高業績者に共通してみられる行動特性」であると定義されていることが多い。この定義に基づけば、高業績をもたらさない者の行動は、コンピテンシーとは呼べないことになる。こうした考え方が人事制度の改革に向けられると、社内的に混乱が起きてしまい、特にベテラン社員にとっては排除の論理として受け取られてしまう。
職能資格制度は、年功序列型の面影を残しているので、職務遂行能力というものを能力として捉えているため、「人」を基軸とした制度であった。これに替わる新しい能力体系として「仕事」を基軸とした役割(成果)主義による制度を導入したわけであるが、どうしても人間に関する基軸を無視することはできなかったものと考えられる。
こうした状況の中で登場したのがコンピテンシーという考え方である。この考え方のルーツは行動科学であるから、やはり人の行動を基点として仕事の成果を考えているので、人と仕事の密接な関係をテーマにしたものである。しかし、コンピテンシーを導入した企業は、あたかも職能資格制度や役割主義を否定するかのような考え方に立っている。
コンピテンシーとは発揮能力であり、潜在能力は高業績とは直接関係ないとでも言わんばかりに、中高年齢者に対するこれまでの処遇に批判を浴びせるものとして襲いかかった。それは、「役に立たないものは、ベテランであっても居場所がなくなる」と宣告されたに等しいため、改革を受け入れる姿勢を示すことができなかった。
こうした拒絶反応を無視して改革に取り組んだとしても、社員の向上心を冷え込ませてしまったままでは、会社全体の士気が低下してしまいマイナス効果の方が大きくなってしまう。コンピテンシーを導入することで、どのような効果が期待できるのかについて、十分に話し合い、現在の制度にも適用できることを理解してもらわなければならない。
コンピテンシーの項目をまとめたものをコンピテンシー辞書と呼んでいるが、そこにはわが社で長年培ってきたノウハウが盛り込まれている。そのことを社員が共感することなしに、制度だけが独り歩きするようでは拒絶反応が先行してしまうので、コンピテンシー推進者は、「成果」と「発揮能力」の因果関係について熱く語らなければならない。
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