多様な働き方を可能にする制度

 職能資格制度のもとでは、社員は一歩一歩階段を上り続けるしかなかった。というのは、社員が努力して能力を向上させ資格を手にすると、それに見合った処遇が保証されるので、評価が公正であることが約束されていれば、個人の目標に向かってキャリア形成を設計することも可能だが、何らかの事情でその路線を突き進むことができなくなることもある。
 そして、給与などの処遇が硬直的なので、現実的には仕事のローテーションが難しくなるといった弊害があった。更には、あまりにも曖昧な人事考課が置き去りにされていたことである。人事考課による一度のミスジャジが、永久に解決されないという悲劇も生じてしまう虞があるなど、数え上げればきりがないほど問題があった。
 その点、役割主義と成果主義の利点を生かした役割成果主義では、自分のライフスタイルに合わせて仕事を選ぶこともできるので、職能資格制度のように高い処遇に見合った成果を求められることもなくなる。それは、役割と成果がセットになっているため、人事考課などといったわずらわしい評価を改めてうける必要もなくなるからである。
 短期的な成果を求められる現代企業において、長期的な成長に重点を置いた職能資格制度では、どうしても会社が求める成果と個人の成果の間にはギャップが生じるので、社員はどうしても会社から債務を負っているという意識になりがちである。その点でも、役割成果主義では、成果に見合った処遇がセットされているので自由度が高い。
 仕事?役割?成果がセットされていれば、高齢者や女性、外国人、あるいは外部リソースなど多種多様な人たちによって仕事を遂行することができる。しかし、これには、チームとして連携プレーが求められる仕事には不向きであるという指摘もある。そうした意見ももっともであると思う反面、適材適所の柔軟な活用という面のメリットも大きい。
 経営家族主義的な発想からすれば、日本の伝統的な慣習とはかなりかけ離れているかもしれないが、少なくとも情報化社会における今日においては、社内という限られた社会に固執して序列を争うより、自分の能力を存分に発揮できる仕事にアクセスできる風土を望む声も大きいことは確かである。ワークライフバランスもそうした発想が根底にある。