優良顧客候補の探索

 何をもって優良顧客とそうでない顧客を区分するかは結構難しい問題である。ある卸売業では、売上高の大きさを一つの目安にして優良かどうかを判断していた。そこで、この区分が当社にとって適正かどうかを検証してみるため、顧客分析と商品分析をしてみたところ、少なくとも利益貢献度という尺度でみる限り全く的外れであった。
 この企業もご多分にもれず、売上高では上位数社で全体の80%を占めているため、優良得意先と位置づけていたが、値引き要求が強いため利益貢献度からみるとかなり低レベルであった。商品についての分析でも、当然これらの優良と位置づけている顧客との取引が多いことになるので、利益貢献度はやはり低くなっていた。
 そこで今度は利益高度の高い順序にソートしてみると、優良顧客どころか最終利益は殆ど赤字であることが改めて確認された。経営者は、そうした事実を初めて知ったわけではないのに、何故か改善しようとしなかったのにはわけがある。それは、資金繰り上の理由で、一気に改善することができなかったというのが本音のようであった。
 もちろん、利益を度外視して営業を続けてきたわけではないが、売上のボリュームに固執してきたことが、利益の獲得を阻害し、運転資金が枯渇してしまったため、これを補うために利益率の低い商品を大量に売りさばくという悪循環に陥ってしまったのである。こうなると、後ろ向きの資金が必要になるが、資金調達ができなければ身動きできなくなる。
 こうした企業は意外にも多く、最初に自社にとって優良顧客とはどのようなプロフィーの顧客なのかという定義が間違っていたことになる。というよりも、新規に獲得した顧客をどのようにして優良顧客に育てていくかというビジョンがなかったため、取りあえず目の前にいる優良顧客(販売額大きい顧客)にシフトした営業になってしまったのである。
 顧客データを分析することによって、当社にとって、「優良顧客とはどういう顧客なのか」という問いかけをすることにより、自社のUVPも明らかになってくるので、新しい仮説を立てる意味においても、何らかの方法でデータマイニングを行うことは最低限必要である。そこから得られた情報を加工すれば、優良顧客候補は必ず見つかる。