顧客分類の手法

 どんな企業でも、ある程度の顧客分類は行っている。それは地域別だったり、法人や個人別、大口小口、取扱商品によっては年齢層別など様々であるが、これらの分類が販売戦略にどれほど役立っているかとなると、かなり疑問であると言わざるを得ない。顧客をセグメントする意味は、顧客の属性ばかりではなく、実際の購買動向を見極めることにある。
 顧客データベースを整備する一つの方法として有用な手法は、主成分分析とクラスター分析により、まず既存のデータを解析してみることである。この方法は、顧客データベースを整備するための仮説を導き出す分析と位置づければ、あまり躊躇することなく取り組めるので、これからCRMを目指すのであれば最適な取り組みである。
 例えば、どの企業にも蓄積されている販売数量・価格・利益貢献度といった基礎情報をもとに主成分分析や因子分析を試みることで、顧客の属性が垣間見られることもある。つまり、数値データの背後に隠されている顧客の満足度や品質重視思考や低価格思考などの組み合わせにより、顧客のニーズが見えてくる場合がある。
 次にこれをもっと明確にセグメントするために行うのがクラスター分析である。この分析では、樹状に顧客がプロットされてグルーピングされるので、顧客同士の近さ(遠さ)が一目瞭然に把握できる。しかも、なぜそのような配列になったのかを判断するヒントがそこに隠されているので、そのヒントこそがセグメントの定義にもなり得る。
 取扱商品にもよるが、大抵の場合、価格志向の大小、品質志向の大小などが明確に表れることが多い。前述のようにこの分析は顧客セグメントのヒントを探すためのものであるから、ここから得られた分析結果がセグメントそのものと位置づけるのではなく、新たな仮説を立てる足掛かりを掴めば初期の目的は達せられたと考えるべきである。
 同じ分析を商品ごとに行えば、データマイニングを行ったことにもなる。つまり、商品同士の相性の良さやその逆など、カテゴリーの括りなどのヒントも見つけられる可能性が高い。こうした分析を通じ、自社の顧客を見直すことで最も効果的な顧客セグメントを定義できることになれば、おのずと真の優良顧客も浮き彫りにされてくる。