顧客データの整備

 CRMとは、情報システムを活用して、企業が顧客との長期的な関係を構築するための手法である。したがって、そこでは詳細な顧客データベースを元に、商品の販売、保守サービス、クレームの対応など、顧客とのやり取りを一貫して管理することで、顧客が潜在的に抱えている課題にきめ細かく対応し、顧客を囲い込むことを目的としている。
 すなわち、CRMを実現するには、まず顧客データベースを充実させることが先決であるが、それはあくまで形式的な要件であり、情報システムを導入すれば直ちにCRMが完成するわけではない。逆に、あらためてCRMを意識していなくても、既に実践している企業も多く存在するなど、顧客データベースの活用によって大きく異なる。
 ここでいう顧客データベースとは、静的な基本属性を保持していることを意味するものではなく、顧客の動きや変化にきめ細かく対応することで、顧客が他社への乗り換えをするコストやリスクを十分に認識させ、自社の顧客として留まることを決意させることにある。つまり、顧客の心をしっかりキャッチするための管理データでなければならない。
 顧客データベースを活用したパッケージソフトなどはかなり充実してきているが、まだ導入に踏み切れない企業も多く見られる。特に中小企業では導入したとしても本格的に稼働してないケースもあり、なかなか進まないのが現状のようである。これらの企業に共通して言えることは、トップと現場の意識の差が大きいことにある。
 ある企業では、CRMの構築を目指し検討会を行ったが、現場の意見は殆ど前向きなものではなく、トップとの意識の差が顕在化してしまった。といっても、トップが革新的だというわけではなく、導入を推奨する専門業者の表面的な説明を鵜呑みにしている傾向も見られるなど、現場の意見とかみ合わない原因は複雑である。
 また、既に導入している企業では、顧客データは一応整備されているが、実際の活用となると、展示会などの祭に発送するDMの住所録に止まっている。いたずらにデータを積み上げるのではなく、顧客のプロフィールを把握しておくことの重要さを全社的に確認しておかなければ、自社に適したデータマイニングなども開発できるはずがない。