ビジョン達成に向け戦略の実行

 ミッションとビジョンの橋渡しをするのが戦略であるとすれば、戦略を実行することがビジョン達成に向けての具体的アクションでる。しかし、戦略は仮説思考により合理的に策定されたものであるから、現実には計画通りにことが進むことはまずないと言ってよい。ということは、達成度をチェックする業績指標を拠り所にして修正を図る必要がある。
 つまり、仮説の積み上げによって作りあげられた戦略を実践することにより、KPI(鍵となる業績指標)をモニターしながらアクションを修正していく。しかし、あまりにも管理会計的なチェックを重視し過ぎると、柔軟な戦略的発想が束縛されてしまうという弊害が生じてしまう虞もあるので、マネジメントの責任は重大である。
 マネジメントの仕事は、最終的にKPIを見極めることではあるが、社員を動機づけるリーダーとしての役割を任っていることを忘れてはならない。中小企業の中には、管理者の役割を曲解していることがよくみられ、定量的な数値目標を達成させるために強く指導することのみが管理であるという固定観念が根を張っている。
 未来型の経営戦略に求められているのは、組織活動をマネジメントするマネージャーではなく、戦略をフレキシブルに動かすリーダーなのである。経営環境が目まぐるしく変わるなか、組織を現状の枠組みで効率的かつ効果的に回すことが組織管理であるという考え方では、競争に打ち勝つのは難しいと言わざるを得ない。
 一度計画された戦略を管理するのがマネージャーなら、戦略を常に仮説思考で修正するためにリーダーシップを発揮するのがリーダーである。もともと、定型的でルーティーンな業務を管理するのが管理者であるマネージャーの役割であるが、リーダーの仕事は、組織をビジョン達成に向けて動かすのがリーダーシップである。
 リーダーシップを発揮するのがリーダーであるとすれば、リーダーは管理者である必要はなく、ビジョン達成のために有効な戦略を描き、機能別組織、事業別組織といった組織のベクトルを合わせることはもちろん、組織と社員個人のベクトルを合わせる人である。そのためには社員のモチベンションを高める推進力が求められる。