事業計画の要約版を作る

 ミッションに始まり、ビジョンを設定し、これを達成するための手立てともいうべき戦略をねり、そして、その道筋をロードマップとして明らかにする。これまでの行程を文書にまとめたものが事業計画書である。次はいよいよ計画を実施することになるが、計画通りにはことは進まないのが普通であると言った方が正解である。
 それでも計画が必要であることは説明の余地はないと思われるが、計画書の目指すところは到達点なので、特に財務的な目標は先行投資を伴うだけに、計画が甘かったでは済まされないという厳しさもある。それだけに、計画の進捗状況のチェックは重要であるが、単に計画と実績との差異を測定するだけでは殆ど意味がない。
 むしろ、計画通りいかないことを前提にして、PDCAサイクルを回しながら、計画の練り直しを予定の行動として考えておくことも計画の役割である。そのために、計画の大筋を組織内で共有し、モニターするべき拠り所が必要となる。この時に役立つのが事業計画書要旨(サマリー)で、計画書の内容が凝縮されているものでなければならない。
 計画は仮説思考によって積み上げられてきたものである以上、計画を実施するということをこの妥当性を検証する行程でもあるわけであるから、細部にわたり計画との差異に拘り過ぎると大局を見失ってしまうことにもなり兼ねない。そこで、自社のミッションとビジョンを拠り所にすることで、計画の修正あるいは改善を新たな仮説によりデザインする。
 サマリーには、全体をモーラした内容が書かれていることが必要条件ではあるが、膨大な内容であっては計画書と役割を区別することができない。あれもこれもと思わずに、自社のUVPを明確に打ち出し、これをどの顧客のどのようなニーズに適応させるのか、そして、最終的にどんな顧客満足を達成しようとしているのかをメインに考えることである。
 ある計画を達成するためには、その裏側で犠牲を強いられることが必ず生じるものであるから、捨てることも計画の大事な要素であるはずだ。計画が革新的であればある程、既存の枠組みでは考えられないほど捨てることは多いのに、あれもこれもと思う心が、大切な物を見失わせてしまい、数値目標だけが取り残されたものでは役に立たない。