未来に向けてのロードマップ

 ビジネスモデルができたからといって、すぐにこのモデルが回り始めるわけではなく、予算という枠をモニターしながら推進するロードマップを策定しなければならない。ここで陥りやすいのは、予算管理制度ですべてを縛ってしまい、フレキシブルな運用ができなくなってしまうことである。ここをうまくバランスさせるための方策がBSCである。
 予算管理は組織上の問題として欠かせない視点であることは確かだが、顧客満足を犠牲にした予算管理は正に主客転倒であり、何のためのビジネスモデルなのかという迷路に迷い込んでしまう。そこで、登場したのがBSCだと考えれば、全ての戦略マップを4つの視点でマネジメントすることで、モデルが円滑に回り始めることになる。
 4つの視点とは、財務の視点、顧客の視点、業務プロセスの視点、学習と成長の視点である。財務の視点とは、お金のことであるから、事業に投下した資本を回収しかつ利益を蓄積し、株主の期待に応えるという視点である。そのためには、売上高や利益率の向上により、株主資本利益率(ROE)などが中心要素として議論される。
 顧客の視点では、顧客の価値観に叶った満足を実現するためには、どのように行動すべきかが議論される。具体的には、顧客満足度、新規顧客獲得数、販売シェア、クレームの防止策などである。業務プロセスの視点では、ビジネスモデルを実際にどのように活用するかということである。開発期間、在庫回転率、訪問回数、改善提案などがこれに当たる。
 最後に学習の視点であるが、実際に業務を遂行する社員のスキルを磨くことである。具体的には、人事労務管理と考えても間違いではないが、社員の満足度、教育・訓練、各種資格取得、キャリア管理など多彩なものがある。人に関する問題は、経験と教育の組み合わせにより、長い年月をかけて形成されるものである。
 この4つの視点から全体の戦略を睨んだマップを作り上げるのが戦略マップト呼ばれるものであり、単なる項目目標の羅列では意味がない。ということは、あまり欲張り過ぎて盛りだくさんにしてしまうと消化不良をおこしてしまい、単なる予算書と同じ意味しか持たなくなる。特にここでは業務のプロセスとモデルの整合性を重視したい。