消費者心理に基づく価格

 消費者心理に基づく価格設定として代表的なものに端数価格がある。これは、価格を10,000円とか15,000円という価格に設定するよりも、9,980円、14,800円にすることで、実際の差額よりも割安に感じてしまうという心理を利用して、消費者の購買意欲を刺激しようとして設定するもので、家電製品や食品などでよく用いられる方法である。
 これとは対照的に、価格がある程度高めに設定されていないと、品質が劣るのではないかというイメージをもち、かえって敬遠してしまう場合もある。こうした心理に基づいた価格が威光価格と呼ばれるものである。例えば、ブランド品などは、価格が高いことが購買者にとってもある種のステータスになるため、お買い得感より優先する。
 こうした心理を狙ったのが価格品質効果であるが、その効果の裏には消費者の選択眼の弱さがある分けで、その仕掛けにいったん気づくと逆効果になる危険性もある。やはりこの価格設定が生きるのは、高度な技術などによって支えられた付加価値を十分訴求できるものであることが必要条件であることを忘れてはならない。
 また、付加価値の高さと全く無関係ではないにしても、一旦認知され定着すると、あまり価格を変えない方が安定している商品やサービスもある。その典型的なものでは電車の運賃や自販機の清涼飲料水なである。これらの価格は一旦消費者の心にインプットされてしまうと、商品のイメージも固定してしまい変わると困惑してしまったりする。
 しかし、この価格帯に設定することに拘り過ぎると、新しい付加価値を提供する場合の妨げになる場合もある。つまり、一旦定着してしまった価格帯から逸脱した価格にすると、提案する付加価値が本当は高い時でも、消費者は割高だと感じてしまい購買をためらうということがある。これなどは、この商品はこの価格帯でないとおかしいと判断してしまう。
 これらの心理を逆利用して成功した商品もある。例えば、数年前話題を独占した「生キャラメル」は、キャメルの常識的価格帯を打ち破り、敢えて超高値にすることで従来の商品イメージを払しょくしてしまった。これはキャラメルという従来の商品とは全く違ったジャンルの商品であるという新たな価値を打ち出したわけである。