複数商品の価格

 価格設定を特定の単体製品にではなく、複数の製品と組み合わせることで関連商品も含めた販売促進を考えるときに導入する価格設定方法に、「抱き合わせ価格」や「キャプティ価格」がある。このうち、抱き合わせ価格は、「抱き合わせ販売」という言葉の方が一般には馴染みがあり、あまりいいイメージをもたれていないかもしれない。
 確かに、度が過ぎた抱き合わせ販売は、全く欲しくないものとの併買を強いるものもあり、場合によっては社会問題に発展する危険もある。しかし、一方では消費者にとっても買い得感があると感じる抱き合わせもある。例えば、ファミリーレストランのセットメニューやあらゆるメニューが組み込まれているツアー商品などがそれである。
 また、プリターとパソコンをセットすることで、購買意欲をそそるという場合などは、消費者の選択の幅を狭めるわけでもないので、有効かつ合理的な価格設定である。要は、併買を選択する消費者に、購買を決意させるシミュレーションが自由にできる余地さえ提供できれば、抱き合わせ価格は有効で合理的な戦略なのである。
 織り込みチラシなどでよく見かける、家電量販店やスーパーマーケットの特売は、ロスリーダー価格またはキャプティブ価格とよばれ、特定の商品の価格を値下げして顧客を引き寄せるための価格設定である。商品単体では利益が出なくても、来店客が増えることにより、クロスセルを狙うことでリピーターとなってもらうことを狙う。
 法人相手の大量取引や複数の商品購買が見込める場合、特定の商品を安く設定することで、取引口座を開き、徐々に取引品目を増やして行き、最終的には継続的な取引を確立することを狙うという手段はよく採られる。例えば、コピー機や複合機を市場価格より安く設定し、最終的にはワンストップで利益率の高い商品も取引してもらう。
 法人向けの営業には、こうした伝統的な価格政策が今でも採用されているが、価格政策だけでは限界があり、当然、自社のUVPが顧客に認知されているということがなければ、固定客として定着するのは難しい。つまり、法人向けの場合は、顧客の問題解決にどれだけ寄与するかという点から価格を考えることが価格戦略のポイントとなる。