新商品の価格設定

 製品・サービスと価格の関係というフレームで考えると、激安価格、市場浸透価格、バリュー価格、プレミアム価格、そして不当な高価格などに分けられるが、新商品に関しては、市場浸透価格、バリュー価格、プレミアム価格が主に用いられる。特に市場価格が安定していない新商品の導入期においては、市場浸透価格とプレミアム価格が採用される。
 まず、市場導入期にコストを度外視しても低価格に設定し、販売数量を拡大して経験曲線を活かすことでコストの低減を図り、徐々に利益を確保できるようにする戦略を取ることがあるが、これがペネトレ―ション・プライシングで、潜在需要が大きい、価格弾力性が大きい、規模の経済や経験曲線が生かせる、価格競争力が高いなどの条件が必要である。 
 これは、早い時期に高シェアを獲得したり、競合他社の参入意欲を削ぐこと狙ったもので、新商品を消費者に認知させるというメリットがある。しかし、期待通りにコストの低減が図れない場合は、設備投資が負担になり、資金繰りに窮することになるというリスクもあるので、状況をよく見極めないと失敗することになる。
 これと似た価格設定におとり商品価格がある。これは新商品というよりも、価格弾力性のある商品を選び、店舗全体の集客力を高める狙いで導入される。抱き合わせ価格のように他の特定商品との抱き合わせを目論んだものではなく、来店者数を増やすことにより、他の商品の販売増加を期待して行われるもので、目的が全く異なったものである。
 一方スキミング・プライシングは、初期に高価格を設定して、投資額をいち早く回収しようとするもので、プレミアム価格に相当するものである。高い収益をもたらす良質な顧客を獲得することを目指している。当然価格弾力性が低いので投資額が早期回収できるメリットはあるが、競合の参入を許してしまうため、総体的な収益が少なくなる虞もある。
 また、このスキミング・プライシングを採用するには、投資額を早く回収することや良質な顧客の獲得を狙うという意味だけではなく、一種のおとり商品として位置づけられる場合もある。それは、潜在需要があることが事前に解っているような場合、新商品に対する興味をもたせ、続いて導入する普及品の競争を有利にしようとする戦略である。