UVPを見つけ出す

 UVPをよく認識していない企業も多く見受けられるが、これを見つけ出すのも意外と骨が折れる。本来は自社のUVPを意識して顧客層を選定しているはずであるが、操業まもない時期には、仮説の検証が十分に行われないままがむしゃらに品質や価格を武器に市場展開したとしても、ある程度の業績を上げることができたという背景もある。
 つまり、市場の拡大スピードが供給力を上回っていた時代には、顧客の価値観は抑圧されたままでも、企業の論理がまかり通っていたので、多少の不合理は供給力に埋没してしまい、あまり顕在化することはなかったのかもしれない。しかし、高度商品化社会が到来し、これに情報化が拍車をかけUVPと顧客の価値観との乖離が顕在化するに至った。
 この事実に違和感を抱き始めて、顧客分析をしてみると、自社のUVPは何かという命題には辿りつかないまでも、自社が何故顧客に受け入れられているかという理由は次第に明らかになってくる。それは、メインの顧客が誰であるかを見極めることで、逆に自社の特徴が見えてくるというプロセスを辿るわけである。
 そうした分析を行った場合でも、「品質」「品揃え」「価格」「付帯サービス」などの組み合わせでUVPを特定することは必ずしも容易ではない。しかし、顧客は明らかに自社のUVPを認識し、自社を取引先として選んでいることは間違えない。ということは、顧客に自社と取引している最大の要因は何かと問いかけてみるのが早道である。
 もちろん、品質にも1次品質、2次品質、3次品質があり、付帯するサービスの程度も異なる。これに価格が加わると、無数のオプションが出来上がるので、最適な組み合わせを探し当てるのは相当難しい。したがって、自社のUVPを特定し顧客ニーズとの相性を模索するには、仮説思考による推論が欠かせないということになる。
 現実に自社のUVPが何であるかに辿りつくまでに、かなり回り道をしたという例も多いが、その一方で、未だにUVPを顧客に押し付けたままの企業も存在する。その確たる証拠を個別に挙げることはできないが、自社が提供した付加価値が拒絶されているため、業績が思わしくないと考えれば、その取り合わせの不合理さを疑うべきである。