実行性のある経営戦略

 経営計画を毎年策定している企業でも策定の仕方は様々で、一定のフォーマットが用意されているところもあれば、これといった形式にこだわらないという企業もある。長期的な経営戦略が現在の市場環境に適応している場合は、ビジョンの修正も微調整程度で済むので、年度ごとに策定される経営計画にそれほど影響しないかもしれない。
 しかし、技術革新の進展が著しい今日、市場の変化も劇的であることを思えば、最初に設定したビジョンに固執することの意味は薄れてしまうこともあり得る。つまり、最初に想定した「顧客にとっての価値」が変われば、これを提供する企業のビジョンも変わらなければ、企業の存在意義自体が失われてしまうことになるからである。
 既存の業種にしがみついていたことが命取りになってしまった例は多いが、これらに共通して言えることは、市場に顧客が存在しなくなったのにもかかわらず、業界の枠組みから抜け出すことができず、企業の体力を消耗してしまったため、業種転換やビジネスモデルの再構築が思うように進められなくなってしまったものと考えられる。
 これらは、情報化への対応の遅れというフレーズで十把一絡げに説明されるが、それは結論であり、そうした遅れを招いた企業体質こそ問題にすべきである。情報化の波に乗り遅れたことは確かに問題ではあるが、単に飛びついた企業が成功したかというと、必ずしもそうとは言えないことは明らかである以上、全てを情報化で説明することはできない。
 情報化は、あくまでビジネスを行うための道具に過ぎず、何をするために情報収集ないし分析をするかという戦略的視点が欠落していれば、合理化によるメリットよりも情報の洪水に飲み込まれてしまうデメリットの方が大きいことにもなる。折角整備したデータベースが住所録としての活用の域を出ていないという例はこのことを如実に表している。
 日常の業務に埋没してしまい、長期のビジョンおよび戦略の策定や良好な顧客関係の構築をおろそかにしてしまうことで、企業の命綱である存立基盤を見失ってしまっては元も子も無い。経営者や役員は、緊急性は薄いが企業の成長に関わる戦略に焦点を合わせ、枝葉末節的な業務から解きはなす仕組みを作らなければならない。