戦略を策定する時の心構え

 中小企業では経営計画さえ策定していない場合もある。策定している場合でも、戦略がスッポリ抜けていて、対前年比の達成目標が羅列されているといった程度のものが多いように思われる。なかには、経営理念やビジョン、経営戦略まで網羅的で整然とした形に整備された経営計画書を見せられることもあるが、あまり機能しているようには思えない。
 こうした経営計画書には命が宿っていない。始めからそう決めつけるのは失礼なので、「どなたが中心となって策定されたのですか?」と聞いてみると、「専門家であるコンサルタントに策定を依頼して作ってもらったものです。」という答えが返ってくる。命が宿っていないというのはこのことで、文脈も修飾された建前論が踊っているだけである。
 確かにコンサルタントとして、経営計画なるものの策定を依頼され、モレやダブリのない極めて形式的なものを策定することはよくあるが、それは、「叩き台の叩き台」であることを経営者に手渡す際にしつこいくらいに説明することにしている。形式をなぞったとしても、内容については、実行する主体の手で作らなければ意味がないからである。
 コンサルタントは、会社の内容を聞き取り分析することで、問題点を見つけ出し、改善や改革の方向を示唆することはできるが、経営者にとって代わり企業を運営することはできない。業績のいい会社はこのことをよく心得ていて、経営の舵取りをコンサルタントに丸投げするような行動は決して取らないものである。
 コンサルタントがミスリードするのは罪深いことであるが、その場合の最大の被害者は企業自身である以上、アドバイスは受けたとしても決してうのみにせず、経営理念を羅針盤にして、自らの言葉で語らなければ、経営計画は機能するはずがない。何故なれば、企業の存在意義を熟知し、顧客の価値観を熟知しているのは経営者自身だからである。
 経営革新計画の策定なども然りで、経営者の手作りで策定されていないのは残念である。企業は基本的に革新機能を備えているはずであるが、一度の成功体験で製品や価格・サービス、マネジメントなどの革新機能が停滞してしまう。はなはだしい場合は、会社の財務内容さえも会計事務所に問い合わせなければ何もコメントできない状況になってしまう。