戦略を動かす原動力となるミッション

 経営戦略を語る上でどうしても避けることのできない概念がミッションであり、ビジョンである。ミッションは、会社の「使命」や「志」といったもので、「経営理念」や「価値観」といったものである。ミッションと経営理念は同じものなのかどうかは別として、「なぜこの会社は存在するのか」という存在意義がなければビジョンも存在しないことになる。
 一方ビジョンは、「この会社は将来どのようになりたいのか」を具体的に定義するものである。ということは、意義のある将来像を描き、これを実現するために必要な会社であることを内外に示すためのものであると捉えることができる。つまり、端的にいえばビジョンを達成するために必要な会社であることを明確にするのがミッションなのである。
 多くの企業では、具体的な社会貢献や従業員の福祉などをビジョンとして掲げている場合が多いが、これを達成するためにわが社は存在しているというミッションが経営の中核に据えられているはずである。しかし、崇高なミッションもビジョンも置き去りにされたまま目先の業務に埋没してしまい、あまり重要視されていないという現実もある。
 確かに掲げたビジョンはそう簡単には達成できないかもしれないが、目標を失ったままでは組織として何をすべきか認識できなくなる。ということは戦略や戦術も必要ないばかりか、組織を支える個々の従業員にとっても働く意欲が減退し、成り行き的に日常の業務をこなしているだけのロボットと化してしまうという構図なる。
 こうした状況を放置したまま、経営計画を策定したとしても、成果が何かが定義されていなければ、正当な評価をすることもできないはずである。人間の真価は、志をもって目標に向かうことで苦難を厭わないというところにある。極一部の例外はあるにしても、全てが例外のように見える現在の状況はかなり傷んでいると見るべきである。
 ミッション→戦略→戦術→経営計画→ビジョンという路線を見直すためには、知識社会に相応しい経営戦略をゼロベースで考えることが必要である。ここで目指すべきビジョンには、顧客にとっての価値という概念を抜きにしては語れない。すなわち、顧客の存在、顧客にとっての価値、自社の独自能力が中心に据えられたものである。