仮説を立てるためのデータ収集(その3)

 仮説を確信に変えるためのデータを選び、それを収集する仕掛けをアンケートの内容に盛り込むのはそれほど難しいことではないが、この際注意しなければならないことは、データを収集することに拘り過ぎ、最終的にどんな課題を解決しようとしているのかを見失なってしまうことである。つまり、アンケート結果が総花的になってしまうことである。
 例えば、飲食店などでの業務改善を課題としたアンケート調査などでは、お客様の個別嗜好に応えるために、数あるメニューの中から好きなものを選んで記入してもらうというアンケートをしたとすると、その結果は、店の販売データとほぼ同じなるはずなので、あまり意味がないことになるが、これに似たようなアンケートは結構多い。
 もちろん、他の設問との組み合わせにより、嗜好ポジションを捉えることでメニューに反映させるという意図があれば別だが、実際には、データを組み合わせて新たな情報をつくりだすという手法はあまり採られていない。味の濃さと年齢又は性別の相関関係を調べることで、同じ料理でも味を加減するという提供方法を開発するという意図が見えない。
 顧客分析は、プロファイリングそのものであるから、同じような嗜好をもった顧客をグルーピングし、店の得意技と組み合わせることで差別化するというのが、本来の目的であるはずなのだが、アンケートの設問からはそうした意図が感じられないことが多い。ともあれ、収集したデータを解析する力があればそれなりの意味はある。
 始めからあまり成果を求めるのは、仮説思考を勧める立場からすると多少矛盾するように思えるかもしれないが、ここでは筋のいい仮説を立てることを目指していることを前提にして議論を進めているので、多少力が入り過ぎていることは認めざるを得ない。しかし、少なくとも仮説検証サイクルが回らないまま思考が進歩しなくなるのは問題である。
 こうした隘路に陥らないようにするためには、収集したデータの論理的構造をビジュアル化してみることである。具体的にはグラフ化することで、データのもつ意味が深く理解できため、新たな仮説が見えてくることに繋がる。こうすることで仮説検証サイクルがまた回り始めるので、新たな気づきを誘うという構想力も育ってくる。