期待理論では、Aという条件が整うとBという状態になる可能性が高いという考え方で成り立っている。数学的な期待値も、条件が同じであればそうなるはずだという仮説を立ててみることで検証サイクルを回し、その仮説が正しいのかそれとも同じように見えた条件が実は異なっていたため最初の仮説が否定されるといったように用いられる。
人間の行動の原動力となる動機は、期待可能性の連鎖によって成り立っているとも考えられる。例えば、テレビのドラマを選ぶ場合でも、どちらが自分の心を満たしてくれるだろうかと考え、最後に決定することになるわけだが、ドラマを見終わった時点での満足度は事前には計れないので、どの程度の満足が期待できるだろうかと考える。
これはまさしく仮説思考であり、ドラマのあらすじや出演する俳優などによって期待を膨らませる。両方のドラマを同時に見ることはできないので、最初に選択したドラマが意外とつまらないと感じれば、別のドラマに切り替えるということはよくあることであるが、それとても、期待を裏切らないということを保証するものではない。
こうした経験を常日頃から何度も繰り返しているため、今度こそ失敗したくないという気持ちが強くなり、自分の仮説力がだんだん強まってくるわけである。企業経営上の課題解決も基本的には同じであるが、期待可能性をどの程度に設定できるかという点では、テレビドラマとは比べものにならないのは言うまでもない。
しかし、経営上の意思決定でも期待可能性をどこに置くかという思考がなければ、結果を受け入れるしかなく、その経験を今後に生かすすべも身につかない。今抱えている課題を解決することでどんな状態が期待できるのかを描いてみることで、そこに至るまでの道のりやその険しさについても新たな課題として浮上してくる。
こうした試行錯誤こそ仮説思考の利点であり、決して欠点ではないことを理解しなければならない。優れた業績をあげている企業の経営者は、こうした課題を常に幾つも抱えており、これを解決する手段とその後に期待できる着地点を想像し、チャレンジしているため、課題を解決するための仮説を立てる動機がより強くなるという構図になっている。
コメント