仮説を立てる上で一番障害になるのは、思い込みないし既成概念にとらわれることである。何かにつけて反対意見を述べ、あたかも反対することに意義あるとでも言いたいような協調性の乏しい人がいる。しかし、ゲーム理論の項でも述べたように、一度決まった枠組みに拘束されて改善のための一歩がなかなか踏み出せないということはよくある。
例えばパソコンのキーボードの配列なども、科学的な根拠があるわけでもないのに、何故か一向に変わらない。それはユーザーが配列の変更を好まないという理由が大きいのかもしれないが、何故現在のような配列でなければならないのかという根拠にならない。こうした既成概念を捨ててゼロベースで考える思考が仮説力を高めるのに役立つ。
巷でよく言われるお役所仕事などは、紋切型で明らかに不合理であることを認識していても、建前を重んじて改善に踏み切らない。企業内における役員の考え方も然りで、一旦成功をおさめたビジネスモデルを死守することが、伝統を守ることであると信じ切っていることがよく見かけられる。経営革新が遅々として進まない原因もここにある。
仮説思考が組織内においで育たないのは、こうした既成概念にしがみついている役員が実権を握っているからなのだろうが、彼らの真理を仮説思考で分析してみるというのも面白い試みである。例えば、このようなステロタイプの役員の思考様式は、どのような価値観で支えられているのかをオプション思考により解明してみるわけである。
ここで生み出された仮説を検証してみることにより、経営革新実行のためのヒントが見えてくるかもしれない。その過程では当然論理的思考が必要であることは確かだが、既成概念や制約条件のみにとらわれていては、柔軟な仮説は何時までたっても生まれない。最初から精度の高い仮説を目指すのではなく、オプション思考で臨むのがコツである。
経営難に陥っている企業の多くは、一旦投資した設備を活用することに固執し、撤退することによって得られるであろう収益を犠牲にしてまで、既存事業の継続に拘る。冷静に分析すれば、そこには経済的合理性に乏しいことが容易に判断できるはずなのに、何故か非効率な再投資を続けるという間違った決定をしてしまう。
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