設備投資計画の策定

 設備投資計画は、土地、建物、工場、機械などに長期資金を投入して行われるもので、一旦投資すると減価償却という会計手続きを経て資金に還流される性質をもっている。そのため設備投資の意思決定は慎重な検討が必要であるが、何らかの形で設備投資を行わなければ目標とする利益も獲得できないので悩ましいところでもある。
 経営環境が一定の法則性をもって直線的に変化することが長期的トレンドとして認識されていた時代には、投資設備の償却はほぼ自動的に行われたため、資金計画も比較的容易に立てられたが、今日のように技術革新の進歩がめまぐるしい状況下にあっては、設備投資の償却が必ずしも円滑に行うことができず、これが企業の資金繰りを圧迫している。
 設備投資を検討する場合、まず、最初に検討しなければならないのは、経済計算によるシミュレーションである。これには、正味現在価値法、内部利益率法、会計的投下資本利益率法、回収期間法などがあるが、いずれも一長一短あり、現実には設備の規模や資金調達コストとの関係などを考慮して決定することになる。
 いずれにしても、資金計画との関連性を念頭において検討しなければならないが、キャッシュの時間的価値を無視して計算した方法は避けるべきである。何故ならば、設備投資だけではなく、資金には何らかの付加価値が求められているため、単に回収ができればよいというものではないから、収益力の高さと回収速度の両面からの検討が必要となる。
 設備投資は年々得られるキャッシュと調達できる資金の種類・金利などから、投資効果をキャッシュの現在価値を求めるという方法(現在価値法)と投資額の回収とキャッュフローの現在価値が同じなる資本コストを求め、実際の資金調達コストと比較して決定するという方法(内部利益率法)があるが、時間的価値を考慮している点では同じである。
 いずれの方法手法を用いるとしても、投下した資金の回収速度とキャッシュフローのバランスが問題であり、本来長期資金で手当てをしなければならないものを、支払手形などで調達している企業もあるが、運転資金管理との関係を考えると不合理であるといわざるを得ないのだが、安易にこうした手法を活用してしまう企業はあとを絶たない。