戦略課題の抽出と解決策の導出

 経営戦略は全体戦略である基本戦略と、個別戦略によって構成され、個別戦略は、組織戦略、事業戦略、機能別戦略によって構成されている。これらの戦略を、順をおって策定するというプロセスを経てきたわけであるが、これらは、元々基本戦略に沿って策定されたものであるから、全体として統合化されていなければ意味がないことになる。
 したがって、策定の途上において全体の整合性をモニターしながら進められてきている筈であるから、個別戦略を構築し遂行するにあたっての課題も全体戦略の課題の一部ということになるが、戦略策定の過程では、他の戦略をあまり意識すると各戦略の焦点がぼけてしまい、抽象的で実効性の薄いものになりがちである。
 そうした弊害を少なくするために、個別戦略に区分して戦略を策定するという方策がとられたため、最終的に完成された戦略は全体戦略とのギャップが生じるのは止むを得ない。しかし、この矛盾こそが戦略課題であると見ることもできるわけであるから、最終的な仕上げという意味でも、全体戦略の課題を明確にして解決策を講じなければならない。
 そこでまず、全体戦略の課題を全社的課題と位置づけ、解決策をセットするという方策を考えなければならない。例えば、自社が選択する戦略タイプがリーダー型なのか、それともチャレンジャー型なのか、それともニッチャー型なのか、フォロワー型なのかによって課題は異なることになる。また、市場細分化により、徹底した差別化戦略を選択するという意思決定をしたのであれば、差別化のための課題がメインテーマとなる。
 しかし、全体戦略という枠組みに沿うことは当然であるとしても、各個別の事業単位でみれば、全体戦略とは異なった方向を選択することもあり得る。例えば、企業全体としてのポジションはリーダー型ではないとしても、ある特定の製品に関しては強みを持っているのでリーダー型の戦略を選択することもあり得ないことではない。
 こうした場合、大きく見ればリーダー型ということになるのかもしれないが、場合によっては、むしろニッチャー型と位置づけた方が、成長を見込めるかもしれないからである。つまり、基本戦略といっても、個別の事業戦略の実効性が担保できなければ、企業の成長はあり得ないので、基本戦略と何ら矛盾するものではないと考えるべきである。