決断力を支える分析力

 企業経営における意思決定は、論理的な根拠によって裏づけされたものでなければならない。そのためには、決断に先行して環境分析を行わなければならない。環境は外部環境と内部環境という視点で捉える必要があるわけであるが、外部環境は、市場動向、景気動向、法改正など、主として自社の統制力の及ばないものすべてを含む。
 既に決定されている経営目標を達成するためには、こうした統制不能な外部環境にどのように対応していくべきなのかという決断を迫られる。経営環境が厳しさを増している中にあって、外部環境の分析を誤ると取り返しのつかないダメージを受ける危険性もある中で、経営の舵取りを担っている経営層の判断はまさに死命を決めることに繋がる。
 最終的には収集された情報を分析して決断を下すことになるが、全ての外部環境を読み込むことが可能であるとは限らない。社外の優秀なブレーンを抱えていたとしても、結果を検証するまでにはかなりの時間も必要なため、結局は業績により意思決定の良し悪しを判断するしかないことになるが、それでも決断せざるを得ない。
 更に、経営上の意思決定は、外部環境の分析と内部環境の分析の融合によってなされるものであるから、経営資源の強み弱みを十分に把握しておく必要がある。外部環境の変化は、捉えようにより、また自社の経営資源の状態により、有利にも不利にも働くが、これとても直接的なものだけではなく、統制可能な外部資源を活用できるチャンスもある。
 経営理念やビジョンに基づいて設定された経営目標を達成するためには、PDCサイクルを回すという枠組みは同じでも、内外の環境をどのように捉えるかによって結果が大きく異ってくる。場合によっては測定が不可能に近い場合もあり得る。しかし、経営者は結果責任を免れることはできないため、時には見きり発射に踏み切ることもある。
 内外の環境分析力が、決断力の源であることは確かであるが、全ての情報を分析するといっても時間的な制約もあり、客観的な角度から見た正しい意思決定というものはあり得ない。してみると、決断力というのは長年培われた経験、積み重ねられ修正に修正を重ねてきた判断基準による総合力であるともいえるかもしれない。