意思決定の種類

 意思決定には2種類あり、基本的には「やる」、「やらない」であるが、場合によっては決断を保留するという決断もあり得る。「保留」するということは見方によっては、決断しないことと同じであるとも言えるが、それは優柔不断というべきであり、状況の変化をじっくり見据えるために時間が必要であると判断する場合が「保留」である。
 保留を含めても3つしかない決断ではあるが、その決断の結果がどのような功罪をもたらすかによって評価が異なることを考えると、そう簡単には決断できないのも事実である。多くの企業が設備投資の意思決定を誤り、償却力不足に陥ってしまうというのも、決断が如何に難しいかを示している証拠であると見るべきである。
 決断を迫られる場合は、その時点で確かだと思われる小さな前提条件を積み上げ、一つの大前提に到達するというプロセスにより意思決定することになるが、そのプロセスは、絶対的かつ客観的なものではないだけに、決断が鈍ってしまい先送りされてしまうことはよくあることであり、決断するには大きなプレッシャーが伴うことになる。
 経営者層はこれまでこうした決断を幾度となく経験して今日に至っているわけであるが、結果論的にいえば、決断しなかったことが功を奏し、大きなリスクを免れたというケースもあることから、一概には決断力を評価することはできないかもしれない。しかし、確たる根拠も示さずに決断を先送りすれば、少なくともその時点では批判を浴びる。
 勇猛果敢に取り組み積極的に決断したことにより、経営基盤を確立した経営者は確かに称賛されるし、決断が成功を導いたことには違いはないが、決断をしなかったことによりリスクを回避できたというような場合はあまり評価されないこともある。その差はどのような評価軸によって振り分けられるのであろうか。
 結論的にいえば、決断により結果がよければ決断力が評価されるし、逆の場合は決断力があだになってしまう。経営者層はこのことを熟知しているからこそ、優柔不断と評されながらも「やる」「やらない」という明確な決断ができないのである。ここには、いわゆる思慮深さと臆病が同居しているわけで、「保留」とは本来異なる意思決定である。