人の話を聞く能力

他人の話に耳を傾けるのはコミュニケーションの基本であるが、立場や経験、年齢などが妨げになり、なかなか人の話を聞けない役員が多いようである。人の話を聞くことは結構エネルギーがいることで、単に上面だけを聞くわけではないので、相手の意図を汲み取る能力も必要であるし、人への関心の深さも重要である。
 人によっては、話は一応聞くものの自分の聞きたいように聞いてしまい、勝手に話の内容を作り変えてしまうということもありがちだ。特に、年齢が高くなるほど人の話を聞く耳を持たなくなり、自分の経験や価値観で話しをストーリー化し、自分の聞きたいように聞いてしまいがちになる。これは一種の老化現象でもあると言えるかもしれない。
 自分では、「人の話はよく聞いている」と自負している人でも、部下などからみると「全く人の話を聞いていない」と評されることはよくある。こうした場合は、人の話を聞いているのではなく、自分の評価軸に照らし合わせて相手を評価しているに過ぎずない。したがって、「あいつは何を話しているか解らない」という評価になってしまう。
 人の話を聞くときは、立場や肩書などをはずして、相手と向き合うことが必要なのだが、相手に対する固定観念が先行してしまい、自分の価値観とは違うことに違和感を覚えるため、正しく理解しようとはしないで、結局は自分の主張を相手に押しつける姿勢に終始するため、コミュニケーションが断絶してしまう。
 最近よく見かけられるのは、結論あるいは結果だけの報告を求めるというスタイルが一つのトレンドになっている。つまり、あまり説明が長いと、結局何を言いたいのだ?早く結論言えと話を遮られてしまう。かくして、断片的な報告だけになってしまい、本当の意味での報告や相談にまで踏み入ることができなくなっている。
 また、話の内容よりもデータのみに興味を示し、結果の報告のみが重要視されると、本当に伝えたい情報が殆ど無視されてしまうことになってしまう。データは全ての情報がモーラされているとは限らないので、現場の生情報を部下から地下に聞くことの意義は大きいはずなのに、忙しさにかまけて聞く耳を持たなくなっている。