プリンシパルとエージェントの関係

 自分に代わって他の人に行動してもらうというパターンは多い。議員を選挙で選ぶ場合もそうだし、株主と経営者、会社と営業マン、発注企業と受注企業、患者と医者の関係などもこのパターンである。これらの関係には、情報の非対称が存在するので、委託者ないし依頼人であるプリンシパルの期待通りにエージェントが行動してくれるとは限らない。
 委託関係が一旦成立すると、エージェントの裁量権は広範囲に及ぶので、プリンシパルとしては、一々エージェントの行動をチェックすることはできない。こうした場合プリンシパルは、一定の成果を保証する形をとれればある程度安心できるが、場合によってはプリシパルの立場が弱いこともあるので、両者の関係を良好なものに保つのは難しい。
 例えば、患者と医者の関係の場合、情報の非対称は著しいのが通常であるから、緊急に施術が必要であると医者に告げられれば、患者やその家族はあまり選択の余地がないので応じざる得ないことになる。しかし、それが患者にとって医者に委任するベストな行動なのかどうかは解らないので、医者の言葉を信じるしかない。
 株主と経営者、会社と営業マンの関係などでは、ある一定の期間内にエージェントである経営者や営業マンがプリンシパルの期待に応えられなかった場合、解任するか降格あるいは減給などという処分が可能であるが、それでも委託期間内に生じた損失は取り戻すことはできない。プリンシパルはこのエージェントコストをどう見積もるかが問題となる。
 プリンシパルとしては、エージェントが期待通りに行動してくれるかどうかは解らないので、モラルハザードが発生することを予め織り込んで委託するとしても、かなりのリスクを覚悟しなければならないことも確かである。通常プリンシパルがとり得る予防策は、成果と報酬を連動させる仕組みを作ることがベストである。
 それにつけても情報の非対称性がキィワードとなるので、情報の収集が成果と報酬を決める重要なファクターとなる。このバランスを契約の時点で取り決めすることも大事なことであるが、それ以上に、一方が相手から不利な条件を突きつけられることにより、引き返せなくなるような事態は絶対に避けなければならない。