情報の非対称性

 ある企業が画期的な新製品を開発したが、マーケティング力が不足しているためなかなか売れないということはよくあるが、これも結局は情報の非対称性の問題が潜んでいるからである。企業はこの商品に対してあらゆる情報をもっているが、消費者は殆ど情報がないので、その商品に対しては懐疑的であるのは当然である。
 何らかのきっかけでその商品が脚光を浴びることになることもあるが、それにはかなりの時間がかかる。開発者である企業はこうしたリスクをコントロールするために、教育的プロモーションにより、商品の有用性を盛んにアピールするという戦略をとる。その分マーケティング・コストもかさむことになるので、結局は商品価格に反映されることになる。
 商品の有用性が消費者から認知されると、企業の信用力がその分向上するため、やがてブランド力となって定着すると、次に開発される商品にも多大な影響を及ぼす。情報が非対称であるという構造については基本的に変わりないのだが、ブランド力が情報の非対称性を埋める形で新商品を受け入れるスピード早まる。
 情報の非対称性で問題になるのは、逆選択がおこってしまうという現象である。その典型的な例としては保険があげられる。保険商品とは、元々リスクを回避もしくは補填するというのが目的で設計されている商品なので、契約者は「最小の費用で、最大の保障」が保険商品の魅力と考えているが、保険会社からすると必ずしもそうではない。
 もちろん保険会社としても、契約者の要望には沿いたいという意向はもってはいるが、経営が成り立つためには、契約者にも応分の負担をしてもらわなければならない。そこで、保険商品を設計する場合に最も重視されるのは、保険金を支払う事故が発生する確率とそれまでに支払うことになる保険料とのバランスである。
 長年の経験と統計的確率から商品を設計することになるとしても、契約者は滅多に事故は起きないので、保険料を安く抑えたいと思うのに対して、保険会社にしてみれば、契約者が何時事故を起こしても不思議ないので、その分のリスクを保険料に上乗せしたいと考える。かくして契約者と保険会社の逆選択がおこってしまう。