リスクをある程度見込み、これを回避するための費用を予算化しておく、いわゆるリスク・プレミアムの典型といえば保険をかけることである。これを抽象化した言い方あるいは比喩的な言い方として、「保険をかける」などという言い方をすることがよくある。つまり、物事が期待通りに進まなかった場合の受け皿のことである。
例えば、雇用をめぐる労使間の思惑なども一つのゲームとして捉えると整理しやすい面もある。まず、労働者の立場からすると、労働という役務を提供することで報酬を得ているので、安定した効用関係を維持したいと考えている。誘因と貢献ノバランスが保たれている場合は、経営者側としても同じ考えである筈である。
原則論からいえばその通りなのだが、現実には双方の間には情報の非対称があるため、リスクに対して中立者であり続けるのは難しい。ある社員は自分の貢献度に対して、あまりにも給料が安すぎると考え、密かに転職を考えているかもしれないし、諸般の事情を考慮して会社に留まる意向が強いかもしれないが真相は明らかではない。
経営者側はこの社員を重要な戦力と評価していれば、給与面でも優遇して雇用関係を維持しようと思うので、本来適正と考えている給与水準より高めに予算を計上することになる。つまり、競合他社に人材が流れることを防ぐためには、多少給与を高くしても止むを得ないと判断するので、好景気の場合でも下方硬直性が常にはたらく。
こうしたことが引き金になり、中小企業などでは高コスト構造が常態化してしまい、価格競争力を弱めてしまう結果になる。例えば、企業が入札に参加する場合などでも、高コスト構造をカバーするため、多少高めの札入れを行うことになるため、どうしても大手企業には勝てないというケースが多く見られるのはそのためである。
この場合、大手企業は中立者なので、特別リスクを避けるためのコスト負担増を盛り込まないので、入札に際して価格を高めに設定する必要がないと考えているからである。リスクに対する態度の違いがあらゆる面で競争力となって表れる。リスク回避者である社員を抱えている企業は、そのことにより自らがリスク回避者になってしまうわけである。
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