昔の人の言葉に「大工気のない人とバクチ気のない人はいない」という言葉がある。期待値効用仮説とはまさにこのことを言いあらわしている言葉である。つまり、どんなに不器用な人でも多少は板を鋸で切ったり、釘を打つぐらいなことはするし、どんなにまじめ人間でも、多少はバクチに興味を持っているということである。
その最たるものが宝くじである。一獲千金の夢を持ち続けて宝くじを買い続けるのは、数学的な期待値からすれば気の遠くなるような確率でしか1等の○○億円は当たらない。また、サイコロを100回振ったら合計幾らの目になるかということを考えると、確率的には350ということになるが、実際には100回程度ではそうなるとは限らない。
人間は期待値に基づいて行動するのではなく、期待値効用で行動するとはこのことからも容易に理解できる。特に自分の行動により期待可能性が高められる場合などは、傍から見ると無謀に見えても当の本人は大まじめで挑戦することはよくある。例えば、ゴルフや誘拐犯罪なども期待効用という誘因に引きずられてアクションを起こしてしまう。
人は理性のみで行動するものではないことは、誰もが感じていることであるが、反面、リスクを避けたいと考えていることも確かである。宝くじを買う人の心理もリスクヘッジを考えているからこそかなりの枚数を買うのであって、多く購入すれば当たる確率が高くなると考えているだけではないこともあるかもしれない。
競馬でも、「ホンメイ」「アナウマ」「ダークホース」を合わせて買うのは、元手資金を失いたくないという真理が働いていると考えられる。これは株式投資などの際のポートフォリオとも通じるものがある。リスクを避けたいという思いの強い人は、期待効用を低く見積っていることになるので、リスク回避者と呼ばれる。
これに対して、期待効用を高く評価している人は、期待値よりも夢を見る楽しさを重視しているので、リスク愛好者ということになる。また、中には期待値と期待効用を同等にみている人もある。こうした人はリスク中立者である。通常は不確実なものに対しては懐疑的であるものだが、時としてリスクをとることもある。
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