多段階交渉の形

 多段階交渉とは、1回目の提案で交渉が成立しなかった場合、2回目の交渉に入る場合を想定している。1回目の提案が拒絶されたということは、自分が最後通牒者になれなかったことを意味しているわけだから、2回目の交渉は攻守が逆転して相手が最後通牒者になるかもしれないということであるから、下手をすると逆ネジをくらう虞もある。
 多段階交渉の場合でも、余剰が目減りするようなことがなければ、多少時間をかけて何度か交渉を繰り返しても構わないのだが、一般的に考えれば交渉事である以上、時間的なコストも考慮すれば余剰は確実に減少することになる。このような場面を考えると、自分が提案する場合、相手がどのように考えるかを読まなければならない。
 相手がもし自分の提案を拒絶して2回目の提案者になれば、時間の経過により劣化した余剰分を差し引いた残りをすべて自分の取り分として提案してくる可能性があるが、その場合は相手の提案を呑まなければならない羽目になると考えれば、2段階目の交渉に進めるのは極めて不合理な行動ということになるわけである。
 こうした展開になることが予想もつかなかったということなのかどうかは、現実の問題としてはあり得ない話ではないが、大抵は相手が望んでいる余剰を見誤ってしまい、墓穴を掘ってしまうことになるのであって、相手の立場に立って余剰を見積もりしていれば、多少不満であったとしてもある程度の余剰は確実に掴むことができたはずである。
 裁判や調停などでの交渉はまさにこのような背景で交渉が進められるが、駆け引きが強すぎると、相手の逆襲に遭ってしまい、交渉を長引かせることによる機会損失は膨大なものになってしまう。最近は経済的合理性という観点から、交渉を早く終了させることが重視されてはいるが、いざとなると身構えてしまい相手の余剰に気配りできなくなる。
 難しい交渉であれば、他段階交渉に発展する可能性は大きいことになるが、その場合、次の段階で余剰がどれくらい残っているのか考えておくのが大きなポイントである。交渉が長引けば、最後通牒者になったとしても余剰は小さくなるので、結局は折半することになるのが落ちであるから、余剰が目減りしないうちに折半を提案する方が得である。