ナッシュ均衡

 与えられた状況をゲームとして捉えるとき、自分と相手という2人のプレーヤーの場合は2×2の表で記述することができる。自分と相手のとり得る戦略の組み合わせから、どんなことが起きるのかを予想することで、自分ばかりではなく相手にとっても最良の行動であることを見つけ出すことがゲームの鍵である。
 その答えが「ナッシュ均衡」というわけであるが、現実の社会現象では必ずしも、そうした均衡状態が常に保たれているわけではない。しかし、ナッシュ均衡ではない状態(誰かが最良でない行動をとっている)とすれば、他の人(プレーヤー)は対抗手段に出ることは時間の問題であるから、長続きしないことは確実である。
 「囚人のジレンマゲームでお互いが自白するだろう」と読みきれるのは、お互いが自白する状態が、このゲームにおける唯一のナッシュ均衡であるからである。ナッシュ均衡がどこにあるのかを考えて突き止めることができれば、次におこる事態をある程度予測することができるので、対立関係にある2者の和解などにも応用できる。
 ただし、このナッシュ均衡は、ノーマルな状態において相対立するプレーヤーの利得が一致することを目指しているという前提条件のもとでしか通用しない。例えば、裁判において劣勢にあることを十分に認識しながら、上訴し続け相手に経済的ダメージを与えようとする場合などがそれである。つまり、自分の利得を捨ててかかっている場合である。
 人間は常に合理的な尺度をもとに意思決定をするとは限らないので、あらゆるものにナッシュ均衡があるとは限らないところに難しさがある。会社の上司とそりが合わないため、再就職の見通しもないまま退社してしまい、家族を路頭に迷わせてしまったという例も少なくないなど、問題がこじれてしまうと合理性という尺度が機能しなくなる。
 ゲームを問題と捉え、勝つ(利得を得る)という行動を選択するという意識がなければ、ゲームとして成り立たないので、ナッシュ均衡も存在しないことになる。ただし、そうしたノーマルな状態から逸脱するのを未然に防ぐために活用することもできる。そう考えれば、問題解決のための足掛かりとして、最も強力な味方であることは確かである。