迎え撃つのか、それとも協調か

 一部のリーダー企業によりコントロールされてきた市場に、新しいビジネスモデルをひっさげて新業態の企業が参入する。その時自社は、この状況をどのようなゲーム(問題)と捉えて、そのゲームに勝利しようとしているのか。これを真っ向から迎え撃つ戦略をとるのか、ある程度の市場を提供して友好的な関係を築くのか戸惑う。
 これをゲーム理論でいえば、「戦う」「協調する」という2つの戦略として扱うが、「戦う→値下げ競争」、「協調する→価格据え置き」と置き換えて考えてみると、ライバル会社同士が、値下げをすれば売上が増えると考えた時に応用できる。自社が値下げをしてもライバルが据え置きすれば、自社は一方的に売上を伸ばすことになる。
 しかし、実際には自社の値下げを、指をくわえて見ているということは考えられない。そうすると、たちまち値引き合戦になってしまい、市場規模が一定であれば、価格据え置き(協調)していたときのシェアはそのままで、売上だけがお互いに減ることを承知しながら、お互いが値引き戦略を選択せざるを得ないことになる。
 この理論は、囚人のジレンマと同じ考え方であり、お互いの利得を護るために取らざるを得ない選択である。つまり、最悪の中の最悪を避けるために、両者が同一の道をはからずも選んでしまうことになる。こうしてお互いの利益が一致する均衡点が存在することが確認できるが、この点をナッシュ均衡と呼んでいる。
 考えてみるまでもなく、民主主義なる概念も結局は、最悪の意思決定方式の中でのナッシュ均衡として「多数決という決議方法」を選択せざるを得ないということなのであろう。したがって、企業経営にまつわる全ての意思決定は、「多数決」を最悪の意思決定方法であるという前提に立って、慎重に行わなければならない。
 戦い続けるのか、負けを認め早々に撤退するのか、あるいは協調路線に移行するのか、はたしてそのうちのどの戦略が自社にとって本当の利得になるのかを考える時、ゲーム理論の「ゲームの構造(問題の全体像)を把握する。」「起こり得る未来を予測する。」「適切な解決策を見つける。」という3つの俯瞰思考が役立つ。